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最高裁判所第二小法廷 昭和26年(れ)1917号 判決

本籍

朝鮮忠清北道永同郡黄金面砂夫里五三一番地

住居

舞鶴市字伊佐津朝鮮建国促進青年同盟宿舎内

日傭人夫

金子明淑こと

金明淑

大正一〇年九月九日生

右の者に対する公文書偽造同行使、詐欺、贈賄被害事件について、昭和二五年五月二二日大阪高等裁判所の言渡した判決に対し、被告人から上告の申立があつたので、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人猪股正清の上告趣意について。

論旨は、本件公文書偽造の点については、共犯の奥平寅夫同津田嘉光は舞鶴市書記として本件公文書を作成する権限があつたのであるから、被告人が右両名と共謀して本件公文書を作成したという行為を公文書偽造として刑法一五五条一項に問擬した原判決は違法であるというのである。

しかし乍ら、原判決が適法な証拠に基いて認定判示したところによると、原審相被告人奥平寅夫同津田嘉光の両名は、いずれも舞鶴市長の補助機関として同市役所西支所において、転入転出世帯員の異動証明、諸配給の通帳交付等の事務に従事していたというのであつて、所論の如き独立した権限を有していたものではない。してみれば、被告人が右両名と共謀して原判示第七及び第一一の一の如く、擅に転出証明書家庭用米穀通帳等を作成した行為を、公文書偽造罪として刑法一五五条一項を適用処断した原判決は正当であつて、所論の如き違法はないのである。所論は原判決が証拠に採つていない資料の内から立論に有利な部分を抽出し、もつて前記奥平津田両名の職務権限に関する原判決の事実誤認を主張するに帰するものであつて、採用に値いしない。

よつて、刑訴施行法二条旧刑訴四四六条に従い、裁判官全員一致の意見によつて、主文のとおり判決する。

検察官 岡琢郎関与

(裁判長裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)

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